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2025年10月号

 「やまなし」はきわめて短いものであり、事件らしい事件もない、いわば人目をひかない作品であるため、片隅にひっそり身をひそめている──といった感がしないでもなかった。
 しかし、私は、「やまなし」は賢治の世界観が、いわば散文詩の形に結晶したともいえる珠玉の短篇ではないかと考えてきた。賢治を代表する作品の一つとして、ぜひ教科書に掲載すべきであると主張し、さいわい十数年前に光村図書出版の教科書教材として採用となった。
 とはいえ、現場の教師の反応は「否定」的であった。「イメージがあざやかで生徒の受けも悪くないが、授業となると、何をどうやっていいか、わからない。」いざ、教材研究となると疑問が頻出する。教師はもちろん、子どもたちも、(いや、研究者のあいだでも)たとえば次のような疑問が出てくる。
 まず冒頭の蟹の子供らの会話にくりかえされる〈クラムボン〉というのは、いったい何か。これは後半に出てくる〈イサド〉同様、賢治の造語であるが、その「正体」がわからない。ミズスマシではないか。アメンボウでは。いや、プランクトンかも知れない。とにかく生物の一種であろうというわけだ。一方、これは水の泡のことではないか、という説もある。その他、あれこれと仮説が出されるが、考えれば考えるほど、正体不明。
       ※西郷竹彦『宮沢賢治「やまなし」の世界』(2009.7黎明書房)より。
◇難教材への向き合い方・教え方◇   全体はこちら pdfファイルです。
算数「時刻と時間」の教え方(2年生、3年生)      鈴木基久・・ 2
総合的な学習の時間                    加藤英介・・ 4
難教材もさかのぼり、繰り返し               宮本 哲・・ 6
難教材『割合』を教えよう                  根無信行・・ 8
「できる」を重視した「くり上がり・くり下がり」の指導  吉田雅直 ・・10
難教材への向き合い方・教え方
    〜1年生の説明文教材〜              岸本ひとみ・・12  
◇連載◇
「どの子も伸ばす」を本気で考える84
  「意欲格差」に負けない!公立小学校へ      岡本美穂・・14
考える力をつけるための授業の組み立て方26
  最悪な状況を乗り切るために            荒井賢一・・16  
社会科(歴史)授業力アップ講座 31   
     社会科における知識とは             深澤英雄 ・・18
「第19期 先生のための学校」
      第1回報告                    荒井賢一・・20
局長・常任委員長だより                      ・・・・・・・21
学力研カレンダ                         ・・・・・・・・23

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